猫ひろしが速いらしい。
明日が谷川真理ハーフという晩に、妻がテレビの情報番組で仕入れた話題を口にした。
芸能ネタはからきしダメな僕でも、走る芸人の話に少し興味をもった。
毎年、足の速い芸人として谷川真理ハーフに参加しているのは知っていた。確か記憶が正しければ、1、2年前に1時間20分台で走っており、それなりに速いのは知っていた。オリンピックを目指すとか、まあ芸人らしいコメントをしていたのも覚えている。
ただ、妻の話を聞くと、そんな悠長なものではないらしい。数年前に素質を谷川真理に認められてトレーニングをしているうち、かなり本格的になったらしい。オリンピック云々も、マラソン選手がほとんどいない東南アジアの国の国籍をとって参加を目指すと、あながちホラ話ではないらしい。そういう出場のしかたをどう思うかは、まあ色々な考えがあるだろうが、とにかく本人が本気なのは本当らしい。
赤羽の駅からランナーの集団に交じって荒川土手の会場に向かう途中、暇つぶしに、i-phoneに「猫ひろし」と入れてみた。Wikipediaのページがすぐ引っかかる。読んでみて顔が少し蒼くなった。
1時間15分59秒。彼のベスト。マラソンも2時間40分台。
僕の今の実力に限りなく近い。
つい1,2年前まで、とても負ける気のしないレベルだったはず。
少し半信半疑で、スタート前のアップをし、スタートラインに並ぶと、直前になって当人がきてインタビューをうけていた。なるほど風貌も以前より大分絞れた感じがする。インタビュワーもただの芸能人相手の突っ込みでなくて、ランナー相手の少し真面目な質問もしていた。
スタート直後の混沌が1km程度でおさまって周りを見回すと、数秒前の集団に彼の姿があった。少し追いつくのは厳しい距離だ。ペース配分を考えてそのまま距離を保ってしばらく走った。
その後自分のペースがよくわからないまま(余談だが、谷川真理のハーフは良い大会だが、スタートとゴール前後の距離表示が頂けない。最大200mくらいずれているので、レース序盤ペースを確認したくてもさっぱり自分の調子が分からない)、5kmを過ぎ、10kmと進むけれど、進むにつれてじわじわ彼との差はついていく。10mの通過は35:48なのでそれほど悪くない。それでも折り返しで彼と約40秒の差があった。
後半、またペースがよくわからないのだが、どうも落ちていたらしい。彼の姿はとうとうまったく見えなくなった。僕のタイムは76分59秒。会場では猫ひろしが自己新記録で15分台を出したとしきりに放送していた。
スタート前、横の速そうな選手が、「猫ひろしに絶対負けたくない」と息巻いていた。僕も正直同じことを思った。
だけど結局(おそらく僕の隣の彼も)かなわなかった。
芸能人でも素人でも、本気で速くなろうと思えば努力は実るんだなあと感じた。折り返しの時にすれ違った走りと真剣な眼差しはアスリートそのものだった。
風貌の割には若く、まだ30歳代前半だそうである。オリンピック代表は別としてもまだまだ伸びる歳なので是非がんぱって欲しい。