この1年は自分の競技より優先するものが多い年だったけど、このレースだけはきちんと走ろうと準備してきた。
結果はどうだろう?そう、自分の今までの競技人生を象徴するような結果かもしれない。
目標に8分届かず、9時間8分。
8時間台が出れば達成感で、ひと段落したかもしれない。あるいは、これだけ準備をして9時間30分に終わったらあきらめもついただろう。
結局宿題を残した。
第二チェックポイントの月夜見は予定通りの5時間30分通過。そこまで順調のはずだったけど、御前山の登りあたりから疲労が見えはじめ、大ダワ以降のペースダウンは防げなかった。最後の金比羅尾根はいつもの通り辛い道のりだった。第二チェックポイントをわずか1,2分前に通過した円井君は8時間47分でゴールしてるから、後半だけでで20分以上差がついた。彼のレース展開が見事なのは確かだけど、自分はまだまだエンデュアランスの世界ではヒヨッコである。
それでも、2003年の初レースで記録したタイムを6年かけて15分更新できたのだから、この半年目標としてきただけの価値はあろう。
今年は、一つめでたいことがあった。6年前、まだ付き合っていた頃の妻が初参加で20時間で走って以来、初の夫婦での完走。お互い色々なハードルがあったけど今年は二人で高尾でよくトレーニングした。一緒に走った感じから13時間台は狙えると思っていたけど、実際ぎりぎりの13時間59分。6年で6時間のタイム向上は身近にいても気持ちのいいくらいの成長ぶりだった。
ちなみに僕は男子30位で、妻は女子36位。これからはお互いの順位で争うライバルである。
さて気まぐれに話題をかえて表題の件、昨年まで長い距離のレースでさっぱりだった僕が今年そこそこ成功できた理由。それはここ1年くらいかけて解決した問題である。もしかしたら同じ悩みの人がいるかもしれないので紹介しよう。
昨年までの数年、数時間を越えるレースで、中盤以降給食後に血糖値が下がりペースが極端に落ちることを何度も経験した。
どうも吸収が良い食品をレース中に補給すると、血糖値が急に上がり、反動でその後インシュリンが出るらしい。ジェル系の食品やあんぱんなど甘いものは軒並みだめである。これはどうやら僕の体質に関係していて、血糖値が安定しにくい体質らしい。周りの人に話しを聞いても同じ悩みをもっている人はあまりいない。
今年の課題は、この血糖値の安定させる方法から始まった。その一つがコーラである。コーラなんて子供の頃はジャンクな飲み物の代名詞だったが、実はマラソン選手でもスペシャルドリンクに使う人がいる。ヤギクンが愛用していると聞いて試したところ、なんと血糖値のトラブルはまったくなかった。何故だろう?ネットを調べて納得した。GI値である。
GI値が高い食品は血糖値が安定しない。ジェル系の食品や甘いお菓子はみなGI値が高い。ところがコーラは以外にもGI値が低いのだ。カロリーがしっかりある割りにGI値は低い。
鍵はGI値だ。
考えてみれば初出場の頃は、おにぎりとか、そんなGI値のそれほど高くないものをもって走ってた。最近は時代の流れに乗ってPOWER GELなどを使うようになった。ところがGEL系の食べ物は吸収を良くするためにGI値が高いのが一般的。それが自分には合わない。
しかしコーラだけではレース中のエネルギーをすべては補給できない。(ちなみにレース中に消費するカロリーは推定7000~8000kcal、レース中に補給するのはその数分の1の1200~1500kcalである)他にGI値の安定した食品が必要だ。何が良いか、いろいろ悩んでいて、ある日アートスポーツで課題解決した。CARBO SHOTZである。何でも店員に質問する妻が、POWER GELとCARBO SHOTZの違いを聞いて判明した。CARBO SHOTZは血糖値が安定しやすい。確かに宣伝にそのようなことが書いてある。炭水化物の形態に関係するらしい。
それまで、スポンサーを積極的に展開するPOWER GELの試供品を貯めてはレースで使うことが多かった。普通の人にはどちらでもよいのかもしれないが、僕のように血糖値が安定しない体質の人にはPOWER GELとCARBO SHOTZは大きな違いがある。実際長い練習で使ってみてその違いをはっきり感じた。
誤解のないように言えば、どちらのジェルが優れているというわけではない。POWER GELはエネルギーとして即効性が高いだろうし、ナトリウムなどの電解質がCARBO SHOTZよりも多いという利点もある。要は人によってあった食料は違うということなのだ。
そんなことで今年はCARBO SHOTZを6本(フラスク2個入り)、おにぎり2つ、コーラ(炭酸抜き、塩入り)×1.5L(+500ml水)で70kmを走った。
結果、血糖値はまったく問題なし。結局CARBO SHOTZ3本分とおにぎり1つを丸々残してレースを終えた。
もっとも別の問題として後半消化器系が機能低下して給食不足になった。これが後半のペース低下にもある程度影響しているかもしれない。一難さってまた一難。これは次の課題。
それにしてもこのレース、勝負にしめる消化器系のウエイトは大きい。どんな状態でも食べ物を吸収できるそんな図太い胃が必要である。
さて、もう一つの話題。今年は初参加の後藤選手がまた飛んでもないタイムで優勝した。7時間31分。2位の相馬選手も昨年の大会記録とほぼ同じ7時間39分。このレースどこまで進化するのだろう?2004年以来同じ優勝者は1人といない。記録の進化が目覚しく、同時に過去の記録は急激に風化する。まるでIT産業の成長を見ているようである。
レース後風呂に向かう車で、5位の奥宮選手と少し話すチャンスがあった。といっても友人の円井君のさらに友人の大内さんを通じて、、だが。奥宮選手はショートのトレランでは一流選手のスピードランナーだし山耐でも上位の常連だ。今年もついに7時間台という素晴らしい結果を残した。
それでもレース前は、仕事やらなにやらで中々レースに集中することのできない時期があったと胸の内を明かしていた。そして、話題が8月のモンブランになると、自分も行きたいけれど、職場の仕事の関係で難しいと話していた。「ちょっと上司に話をしたら険悪になりました」とのこと。
アマチュアかもしれないけれど、複数のスポンサーをつけて、トレラン雑誌の常連でもある奥宮選手。どんなに競技優先の生活してるのだろう?と勝手に想像してた。そんなことはない。仕事との両立に苦慮している。そういえば以前読んだ雑誌で家族と過ごす時間も大切にしていると書いてあった。2位の相馬選手も幼い二人の子供の父として、競技との両立を試みている。
数年前、オリエンテーリングで世界を目指していた自分を思い返す。仕事や家庭をいい訳にしていなかったか。自分は与えられた環境で最善をつくしていただろうか。
この1年の苦労をまったく見せず飄々とした相馬さん。愛嬌があって謙虚な奥宮さん。2,3会話するだけで応援したくなり、廻りも頑張ろうと思ってしまうポジティブなエネルギーを発散する選手。月並みな表現だが彼らは眩しい。
今年の山耐も、まだまだ頑張れるぞ!という気分にさせてくれた。これが山耐の一番の効能。
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