trail (動物・人・物が残した)跡、小道
辞書を調べるとそんな意味が出てくる。
この「trail」という言葉は、オリエンティアには2つの意味をもつ。
おそらく多くのランナーがtrailといえば、トレイルランニングを想像するだろう。
トレイルの意味のごとく、森の中の小道や踏み跡に近いところを走る競技だ。
昨今のトレイルランブームにはここでも触れたことがあるが、競技人口はおそらく数万人程度はいるはずだ。
昨今優秀なトレイルランナーを輩出し、競技人口が一部かぶっているオリエンティアの間でも使われる名称である。
一方多くのオリエンティアがtrailといえば、まったく質の異なるスポーツを思い浮かべる。トレイルOだ。
trailでもより整備されたトレイル、具体的にはハンディキャップをもった人、車椅子の人でも通れるような整備された道で行なうオリエンテーリングだ。オリエンテーリングから派生したこのスポーツは、日本で推定競技人口数百人程度だろうか。しかし熱心な愛好者を集め着実に普及している。
24日はこの「トレイルO」の大会が小金井公園で開催され、その運営協力に出向いた。
東京都オリエンテーリング協会主催のことイベントに、都協会加盟クラブの協力要員としての運営参加である。
トレイルOは、トレイル(道)上から見える範囲の地形に置いた複数のフラッグから、地図に示されたコントロールがどれかを当て、その正解の数を競う競技である。基本的に時間は競わない。ハンディキャップのある人と健常者が同じ土台で競うことができることを目的としているためと思われるが、通常1箇所だけタイムコントロールという場所のみ時間を競い、同点の場合の順位付けに使われる。
正解は必ずしもあるとは限らず、「正解なし」が正解のこともある、なかなか一筋縄でいかない競技だ。
個人的には、1,2度経験したことはあるが、あまり詳しくはない。運営できるは不安だったが、トレイルOで日本代表経験もある宮川さん親子と一緒だったため安心した。多田君を含め4名でタイムコントロールを担当し、タイムキーパを勤めた。
このタイムコントロールは、トレイルOの観察にはもってこいでなかなか面白かった。
タイムコントロールは、それほど難しいコントロールではない。しかし時間を計るため、簡単なトリックに引っかかる選手が多い。
(実際僕もそのコントロールは「当然Bだろ」と思っていたのにAが正解だった。)
選手は皆真剣だ。緊張感は運営者側にも伝わりタイムキーピングも当然真剣。ちょうどテストの試験管をやっているような気分だった。さすがに強いといわれる選手の動きは素早く判断も速い。地図を渡された時点からの手続きも初心者らしき人と熟練者では違いがあって面白い。
3時間近いお勤めを終えたあと、ためしにコースを廻ってみた。随分と悩ましいコントロールが続く。こんなのどっちもあってるじゃん、と思いつつもとりあえず正解を選んでいく。制限時間2時間とのことだが25分足らずで廻ってしまった。一応オリエンテーリングの全日本チャンピオンだし、それ以上時間をかけてじっくりやっても点数が上がるとは思えなかったのだが・・・。
結果を見ると15点満点で9点、6つも間違えた。競技結果を見る限り平凡な結果。正解を見ると確かにやられた!というコントロールもあった。が、そんな違いあるの?とちょっと不完全燃焼のところも多々あった。これって本当に全部当てられる人いるの?
ところが結果を見ると、驚くことにトップは15点満点。1問不正解の14点も数人いた。聞けば強い選手が順当に上位とのこと。つまりほとんどどっちでもいいように見えるコントロールも、熟練者にはきちんと正解不正解がわかるのだ。素直に感心してしまった。
この競技オリエンテーリングとは根本的に何かが違う。そんな印象を受けた。何の努力もしていないのに言うのは失礼かもしれないが、自分はこの競技ではあまりいい選手にはなれそうにない、そんな予感がした。、そしてこの競技、何かに似ている・・・。
地図調査、測量、そんなものに近い。でもぜんぜん違う分野だけど、天文学に通じるものはないか・・・。限られた線上から遠くの物体を観察する。一点からは二次元にか見えず限られた情報であるものを、違う点から観察し情報を補っていく。そしてその他の物体との位置関係など総合的に見て、理詰めで結論を下す。その場に行けばいとも簡単に分かることだが、遠くから眺めることで謎めいた問題になる。
地球からの視差など情報を総合して、行くことのできない遥かな天体の招待を暴くプロセスに似てはないか。
差し詰めコースプランナーは神のような存在、ただ、違うのは、推定の積み重ねで事実を探ることしか永遠にできない天文学者に比べれて、トレイルOは競技が終われば回答を知ることが出来ること。
時間的要素に薄い点も、早さよりも正しさが重要な理学に通じる。そう思ってみると、トレイルOの参加者は、どこかしら、大学時代理学部周辺で見かけたようなちょっと浮世離れした学者肌タイプの人が多いような・・・・。
一方対照的なのはオリエンテーリング。あらゆる有象無象の情報を取捨選択しなければいけない。そこでは情報を100%として処理せず、信頼度を勘案しながら進む。そこにはあいまいな区間があってもよい、目標に速く達するこの方が重要。なんとも工学的発想ではないか。そして工学者の究極は村越さん。
自分がオリエンテーリングに向いていて、トレイルOが向いてないと感じたのは、自分が工学者だからだ!となんとなく納得した。
金曜日, 9月 28, 2007
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