今年は雨も降っておらず、寒くも暑くもないちょうど良い気温。走り出しの身体は比較的良い状態。薄暗い田舎道を縫ってぼんやり黒い塊となった里山に向かう。あまりスピードを出しすぎないようにロード区間を終えて林道の登りへ。
比較的走りやすいなだらかな登り。徐々に明るくなっていく中、走りやすいトレイルが続く。自分の調子がまだつかめないので心拍を見ながら自重して進む。123のロード区間を過ぎて、121過ぎの切れ込んだ沢を下り登り返してA1に向けた下りのロードへ。身体の動きは悪くない。
A1 川場スキー場第4駐車場 1:30:51 54位
時計を見ると、昨年より6分近く速い。それほどペースをあげたつもりはないが、今年の方が体の動きが良い分いいペースで来てたのか。ここはバナナと水の補給で数十秒でにエイドを後にする。
ここからは剣が峰に向けた急な登りが続く。初めから無理せず早歩きに移し、つづら折りを延々と登っていく。ここでも心拍を150以内に収めるよう気をつけて登る。
登りは飽きるほど長いがまだ疲れる距離でもないので淡々と登る。
やがて視界が開けて森林限界を超え、剣が峰の頂上が見えてくる。このあたりどちらを見ても見事な景色。はるか遠くのスカイラインまで綺麗に見える絶景。レース中に遭遇した景色では今までで3本の指に入るかもしれない素晴らしい眺め!
頂上は2時間57分で通過。昨年より7分ほど速いタイム。
一転110付近の下りは、岩場と泥濘の急斜面で去年と同じような状態。脚を大きくアスレチックに使う下りはあまり得意でない。焦らず手足を使って木の根岩に掴まりながら降りていく。
結構しつこく厳しい傾斜が続いて、だんだんいやになってくるが、やがて斜面はゆるく走れるトラ―バースのシングルトラックに。2,3回渡る沢水の一つで手足と顔を洗ってリフレッシュ。
砂利道に出てそこからは重力を使って適度にスピードに乗ってW1へ。
W1 3:44:05
昨年までは、給水所は水しかなかったが、今年はクエン酸入りのメダリストが支給される。これがレース中に飲むと本当においしい。A2までは短いので、飲んで補給するだけで次に向かう。
ここからは下り基調の舗装道。あまり無理して飛ばさないようにだけ気を付けて快適に。
A2 宝台樹スキー場 4:08:17 IN 4:12:46 OUT 29位
ここで昨年より13分速い。
次はレース前半の最難関の武尊山。途中W1を経由するがそこでの補給の量は望めないので、ここで2つのボトルを満水にし、トイレにもいって4分ほどの休憩。
エイドを出ると、スキー場を遥か直登していくコースが、でーんと眼前に現れる。登っている人はポツポツ数人見えただろうか。昨年はここで10-20人は見えたので、今年の方が通過時間が速い分、人がまばらなのだろうか。
ひたすら歩いて登る。途中、コースは目前の山を左に巻いて登っていく。前も後ろもはるか先が見えるが、どちらの選手も間隔はあまり変わらない。マイペースでひたすら我慢。
99付近で登り切るとオープンの尾根道を下っていく。途中砂利道になって、すぐにW1からA2に向かう道に合流する。97付近。ここではA2に向かう沢山の選手とすれ違う。すぐに許田君とすれ違った。元気そうに見えたが、彼の昨年のタイム(23時間代)からすると、やや遅いペースで、どうしたんだろう?とちょっと不思議に思う(レース後彼によれば、トレーニング状況を鑑みて前半を抑えたようだ)
W1 4:58:33
メダリストを飲んですぐに出発。
エイド直後に、女子選手にすっと抜かれる。昨年優勝の大石さんだった。細い身体でゆるい登りの舗装道をすべるように走っていく。はじめ少しペースを合わせてみたが到底無理だと感じてすぐ前に見送った。さすがに女子のトップ選手である。
93付近で道は砂利道から登山道に入りシングルトラックへ。登り口で前に女性が歩いているのが見え、おや、大石さんかな?と思ったら背格好は似てるものの違う選手で、加藤さん(女子3位)だった。
やがて加藤さんに追いつき、少し並走する。その先は武尊山まで前後するものの概ね見える距離でご一緒した。
途中、ポツポツと選手を抜いたが、あまりペースを変えず淡々と登っていたように思う。
途中91付近で稜線から離れ笹やぶの中の道へ。本当によく切り開いたと思うけど、藪の中で視界も悪く急斜面、刈った笹と泥濘で滑りやすい地面、非常に根気のいる区間である。
それでも、我慢しているとやがて頂上の声が聞こえてきた。
武尊山の山頂は6時間44分。昨年より16分速いタイムだ。やはり今日は昨年より少し調子が良い。21時間も現実的な目標に思えた。
稜線に出ると、それまで目前にいた加藤さんがすっ、と見えなくなった。僕は登りから下りへの切り替えが苦手なようだ。筋肉がパンパンな状態からぐに下りに対応できず、数分の切り替え時間が必要になる。たいていそこで前の人に置いていかれる。
それでも、89付近、素晴らしい眺めの中登山客に道を譲ってもらいながら、一人で気持ち良く2000mのトレイルを楽しんだ。
ここからの区間はほとんど前後のランナーを見なかった。A3まではきついコースではないが泥濘がひどく、途中86付近だろうか、うかつにも転倒、全面から倒れて右脚の膝を強く殴打してしまう。からだは泥だらけで、膝もじーんと痛みが走った。幸い岩でなく木の根にぶつけたので切れてはいない。ペースを落として歩きながら痛みが引くのを待つ。ここまで順調だったレースに少し狂いが生じた瞬間だった。
しばらく歩いてからペースを戻して走り始める。そのまま元のペースをつかめないままにA3にたどり着いた。
A3 武尊牧場キャンプ場 7時間44分27秒 22位
ここまで昨年より16分ゲイン。水分とエネルギーをしっかりとる。
荷物を降ろすと、この日この後何度も悩まされる想定外の一つ目に出くわした。
背中のザックポケットに入れていた600mLのボトルがなくなっていた。どこだろう。おそらく木の根を潜る時に擦れて落ちたのだろうか。
幸い500mLのボトルの他に、300mLの予備ボトルを持っていたので、合計800mLはある。これ以降のエイド間はこの量の水で走らなければならない。幸い1日の暑い時間帯は過ぎており、この後気温は下がっていく時間帯なので大きなトラブルがなければ大丈夫だろう、と気を取り直す。
ペースが昨年より速いので疲れが少し心配になるが、今のところ闘志は衰えてない。
3,4分の休憩で次に向かう。
エイド後にキャンプ場内の道を進んでいく。ここで2つ目の想定外。
次のエイドまでのコースを思い出しながら進んでいると、ふと道の方向が昨年の記憶にない方向に曲がり、遠くにA3にこれから入る選手が走っている姿が目に映った。あれ?なんかおかしい。
慌てて元来た道を戻る。先ほどのエイドで抜かした加藤さんも、おかしいと気づいて戻り始めた。
どこかで曲がりを見失ったのだろう。2、300m戻ると右に曲がる矢印を見落としていることに気づいた。推定ロスタイム4分程度。しまった、ここまで順調にタイムを稼いできたのに、、勿体ないことをした。
あまり落胆しても仕方ないので、景色を楽しみながらゆるい砂利道の下りを快適に走っていく。82,81,やがて道は登りになり、そこで加藤さんに追いついた。
歩くペースは加藤さんの方が速い。その代わり僕はだいたい3分の2を走って残りを歩く。トータルのペースはあまり変わらず。
たわいもない会話をしながら、次の難関に向けて進んでいく。
78でスキー場の直登が見えてきた。昨年の記憶で辛い場所ベスト3に入る。脚の関節が固いせいか、急な登りに弱い。なので、無理せず斜めにジグザグに登って使う筋肉を微妙に変えて紛らわす。前を行く加藤さんと着かず離れず、黙々、淡々と登っていく。
この急登ははじめは絶望的に感じるが、冷静に時計を見れば約20分である。300mの標高差を登り切ると77でスキー場の下りコースに入る。今後は急斜面と緩斜面のコンビネーションで、急斜面はブレーキをかけて走るのがつらくなる。延々と下っていくうちに大腿二頭筋に疲労がたまっていくのをヒシヒシと感じる。
ようやく下り終えて、73の集落の間を抜け、再びスキー場の登りに取り掛かる。このあたりでずっと前を行く加藤さんを抜いた。また急登をジグザクと登る。もういい加減いやになる頃に頂上につき、72からスキー場の下りになり2kmほどでA4につく。ここでは、かの奥宮さんがマイクで励ましてくれながら出迎えてくれた。
A4 片品高原スキー場 9:32:26 22位
昨年より14分ゲイン。途中ロストした分でゲインが初めて減ってしまった。
疲労感はまだなく、食料補給と水分補給でここも3,4分でエイドを後にする。
エイドから66付近までしばらくは平らな農道の道。ポツポツと70Kの選手を抜きながら走る。昨年の記憶ではすでに辛さを感じた記憶があるが、今年はまだそれほど辛く感じない。やはり昨年に比べれば良い状態だろうか。
このあたりからは周りの選手というよりも、自分の昨年のタイムをベンチマークとして走る。
やがて林道の登りから、65付近でシングルトレイルの急登に移る。ここも結構きついが、最後の手ごわい尾根を越えると63あたりから尾根の下りのトレイル。オリエンテーリング的に快適なリズムで得意な下りだ。最後は泥の急斜面で沢山の70Kの選手を沢山抜いてW2に入る。
W2 十二様 10:50:42 19位
ここでのゲインは17分に。水の補給をして直ぐに次に向かう。
再び砂利道のゆるい登り。もう一度山を越えるとドロップバッグのあるA5につく。いわば前半最後の難所といったところか。
ここの登りは2段になっていて、400mくらい登った後に一旦平らな林道があり、さらに200mくらいの登りがある。
昨年の記憶では一段目にきつい記憶がなかったのだが、今年は1段目の途中(60付近)で疲労を感じてペースが鈍りはじめた。心拍があがらなくなり、すぐにおかしいと気づく。A4を出てからあまりきちんとした補給が出来ていなかったせいだろうか。羊羹を食べてエネルギーをとり、いったん落ちたペースの回復を待つ。やがて59で平らな林道に出てゆっくり走り始めると、エネルギーが身体に行き渡ったのか、体が復活してきた。
57で林道から最後の急登の道に入った時、もはや夕暮れ時に移っていた。とぼとぼ歩いている120Kの選手を一人抜かす。走ることはほとんどできないが、一歩一歩しっかり登って頂上を目指す。
やがててっぺん56から下りに移ると、今度は今までにない急傾斜の直滑降コース。足でブレーキをかけるので精一杯という斜面が続く。ここもこのレースの難所の一つだろう。足の悲鳴が聞こえ始めた頃に斜面が変わりはじめ、やがて快適なスキー場の緩斜面になる。ここでもう一人120Kの選手を抜かした。
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