土曜日, 4月 29, 2023

UTMF2023 その3 後半

 A5 富士急ハイランド 96.4㎞ IN 14:36:02   OUT 14:52:38

エイドに入るちょうどその瞬間にSUUNTOが日の出を知らせるアラームを鳴らした。エイド内は既にうすら明るく朝を迎えている。ドロップバッグを受け取ってからエイドまでの100mほどの距離が妙に長く感じた。

椅子に座り、ドロップバッグを開けてチェックリストを確認、アミノバイタルと眠眠打破を補給した。眠眠打破は味がきつく、胃が少し気持ち悪くなる。その後リアルゴールドを少し飲むけどあまりたくさんは飲めない。エイドの味噌汁を少しすすって身体をあっためた。

食料は後半に合わせてバッグのポケットに詰め込む。充電はスマホもSUUNTOも大丈夫そうなのでなし。着替えなども特に問題ないので、そのまま何も変えずに進むことにする。

準備はすんだが、身体が立つのを少し嫌がったので
、2,3分だけ椅子でぐったり休ませた。

さて、いざ後半へスタート。

エイド内を次の区間に向かうと、声をかけてくれる人がいたので、誰かと思ったら元慶応の小河原さんだった。昔と変わらないのですぐにわかった。昨年もボランティアをしていたそうだ。応援の言葉をかけてくれ、手を振って次のエイドに向かう。

夜がすっかり明け、朝の森の清々しさを感じる。カフェインを補充したせいか、気分は上向いている。次の区間に向けて脚が動き、心拍もしばらく110台に低下していたのが120から130まであがってくる。すぐに一人を抜き、その後ロードでもう一人抜く。昨年もこの区間は元気だったので、カフェインの効果は大きいかもしれない。

気持ち良いなだらかなトレイルの下りから小倉山、ロードを繋いで再びトレイルとペースはいい感じで進む。忍野に向かう急登でまとめて数人の集団に抜かれるが、これも毎年同じ。富士の絶景ポイントがあるので振り返ると残念ながら雲の中に隠れていた。

森のトレイルの起伏を繰り返し20分ほどで忍野の集落に向かう道へ。ここで先ほどからなんどか会っている伊東選手に追いつき、2,3会話する。ITJで上位になった選手とのこと。「エイドはもうすぐですよ」「登り速いですね」みたいな会話だったか。大きい笑顔が印象的だった。

A6 忍野 112.4㎞ OUT 17:17:55 
エイドでどんな補給をしたか、あまり記憶がないけど、バラエティのないエイドなので、バナナは食べたと思う。次はあまり長くないので水は片方だけ補給。
ここから4㎞ほど平坦なトレイルが続く。4年前はここで失速してたくさん抜かれたけど、今年はほぼ前後と同じ感覚で悪くないペースだったと思う。やがて大平山に向けた緩い登りが始まり、この区間は案の定あまりペースが上がらずじわじわ抜かれることが増えた。
心拍も110前後に落ちてしまうが、足和田山と同じで我慢。
大平山で「90位くらいだよ」と教えてくれる。(実は100位くらいのはずだ)それまでスマホなど見ず、順位もなるべく意識気しないよう走ってきたのだが、調子の割にまわりの選手の多さに順位が気になりつつあった。

90位。このままいけば優先出場権は取れる、というポジティブな気持ちと、少しでも後半崩れたらだめだな、というネガティブな気持ちが入り混じる。

一緒に走っていた若い選手は、「抜かれること多いんですけどね、このまま頑張れば100位いけるかな」、と元気を出していた。ただ下りの走りが今一つだめならしい。その後平野に向かう下りで、その選手はおいていった。下りはリズムよく走れていたので、さらに2名ほどの選手を抜いて山中湖に向かう。

A7 山中湖 124.7km IN 19:14:53  OUT 19:21:53
まずトイレに行っておくが、便意がまだこず、あきらめる。3分のロス。おにぎりがあったのでさっそく補給。これは美味しくて元気になる。

幸い2日目になって気温はそれほど上がっておらず、次の区間で昨年の暑さのような苦労はしないだろう。水は1Lに加えて手持ちのフラスクに半分くらい入れて出発する。鉄砲木の頭の登りは、野焼きが終わって歩きやすくなっており、たんたんと登れた。34分くらいで頂上についたので悪いペースじゃないな、と思う。

頂上を過ぎた後のアップダウンは、そろそろ大腿筋の痛みも出てきてるが、昨年に比べると程度は軽い。最初前に一人、後ろに一人の気配で淡々と走るが、そのうち前は見えなくなり、後ろは気配が消えてくる。途中からはほぼ一人で走った。

しばらくひとりで紅葉樹の見通しがよく静かなトレイルを楽しんでいたが、犬伏峠に近づく頃にやがて再び何人かの選手が一緒になる。峠を越えて石割山に向けた登りで、一人の選手とずっと同じペースで進むことになる。1112の柴崎選手だ。あまり会話はしないが、起伏に対してペースの取り方が似ており、1時間ほどほぼ一緒に進む。最後は少しの差で二十曲峠に到着した。

A8 二十曲峠 138.2km OUT 22:20:13

4年前より40分くらい早く到着した。身体の感じも悪くはないし、胃も今のところそれほどひどくない。

アンパンをかじってる選手がいてちょっと惹かれたが、そこまでの胃の元気はなかったので、バナナで補給。
昨年は暑さにやられて寝ている人が何人かいたが、今年はそうした厳しい状況にある選手は見当たらない。これから嵐のような夜を迎えるのだろうが。その前の平穏な昼下がりエイド、という空気だった。

水は次に向けて量型満タンにして、あまり時間を置かずに5分程度で出発する。
前方の尾根に2名の選手がいるのをちらほら見ながら尾根道の起伏を進む。まだまだ体は動く。

途中少し抜いたり抜かれたりしながら、核心の杓子山に向けた登りに近づく。杓子山につく頃には柴崎選手が30秒ほど前にいる以外前にも後ろにも選手はいなくなった。
ロープと三点支持を駆使して岩場を一歩一歩登っていく。昨年や一昨年のつらい経験に比べると、身体は動いてイメージよりも早く頂上が見えてきた。
杓子山で鐘を一回鳴らし、そこからの急斜面は脚の筋肉もまだ大丈夫で、いつもの通り自分のペースで気持ちよく走れた。途中柴崎選手や女子選手を一人抜く。つづら折りに入る頃にもう一人選手を抜き、林道を気持ちよく下る。最後で柴崎選手に再び追いつかれ抜かれるが、エイドでは見える位置だった。


A9 富士吉田 150.0km IN 24:52:10   OUT 25:04:47


ここでトイレ休憩。5分はかかったか。
その後楽しみにしていたうどんを啜る。これは元気になる。コーラも飲んでエネルギー補給は万端にしてスタート。12分かかったのでエイドで何人か抜かれたらしい。

2015年の時、このエイドを出た時に眼から涙が溢れ出た。フィニッシュには早いけど、このエイドを出るともう完走は目前で、ここまでトラブルがなければ自分が目指した納得のいくレースに限りなく近くなる。そんな気持ちからだった。今年、歳取ったのか感性が鈍ったのか、涙腺は緩まなかったけど、2015年以来の出来であることは確かだ。

最初のロード4㎞は市街をたんたんと一人で進む。選挙前日の追い込みであちこちの選挙カーから候補者の振り絞る声が聞こえてくる。

エイド出た時、前に一人速い選手があっという間に小さくなっていったが、それ以外は前後まったく見えない。
市街を通り過ぎ、いよいよ山に入って登り始める。最後の比高600mの登り。一生懸命脚を前に出すが、心拍は110台からそれ以上はあがらない。少し平坦なところはなるべく走ろうとするが、数十歩で歩いてしまう。
自分が100位に近いところで走っているだろう、とは認識していたので、最後の山でもなるべく抜かれたくない、その思いから、後ろを気にしながら登ることになった。つづら折りで振り返るの繰り返し。中盤まではそんな感じだった。

後ろの気配をずっと感じない。意外といいペースで登れてるのかな、と思ってると登り残り1/4くらいのところで、突然すたすた登ってくる後続選手にあっという間に抜かれた。「あともう一息ですね」くらいの会話をする時間しななかったような。その後ろ姿も直ぐにつづら折りに消えていった。時々すごいスタミナを残して最後の山を越える選手に出会う。

その後、少し登り、尾根まであと10分もないところだったと思う。派手に応援してくれる一団に出会った。ここは名前まで呼んでくれて大きな元気をもらった。通り過ぎた後に耳を澄ませたが、応援の音がしばらく聞こえないので少なくとも5分くらいは間があいてるだろうと確信する。

すぐに霧山の尾根にたどり着いた。この時点で26時間37分、27時間30分も見えてきた。下りで気持ちを切り替えてペースをあげる。

途中ものすごい勢いで一人選手に抜かれびっくりした。抜かれた後にKAIのトップ選手であることに気づいた。その後KAI2位の選手にも抜かれ(甲斐選手だ)る。

山道が下りから平らな散策道に入る林道で残り4㎞と言われる。よし、気持ちを一段切り替えていこう。登りは歩いてしまうが下りは筋肉の痛みを一段高いところで我慢してペースアップ。よしまだ身体も動くぞ、終盤の気持ち良いトレイルから急斜面を下り、いよいよロードが見えてきた。

応援に包まれる中舗装道に出ると、ここでKAIの3位選手に抜かれる。気持ちだけは後をおい、国道と踏切を渡り、富士急沿いの舗装道を一生懸命走る。

今までの静かな森のトレイルから、遊園地の無機的な工作物の世界に飛び込むと、なんだか不思議の国のアリスやら伽話の主人公になった気分になる。

最後の最後、遊園地の脇でFUJIの選手に抜かれてしまう。笑顔で、失礼しますと。ペースは僕よりだいぶ速いので、悔しいよりすがすがしさを感じた。すごいなあ、と感心しながら後を追った。

最後のコニファフォレストに向かう橋を登り、行きかう人に応援してもらい、最後のフィニッシュレーンにたどり着く。レーンで応援してくれている人とハイタッチ。毎年ながら、最後のフィニッシュはあっけなく、テープを切るとそれで165㎞の道はおしまいだった。

FINISH 164.7㎞ 27:32:45  総合96位 男子90位

28時間の目標をクリアし27時間32分は2015年の27時間58分を超えて正規コースでは最速のタイムとなった。

順位は96位と優先出場権をギリギリ獲得できた。このタイムでギロギリになるとはこの数年で選手のレベルも上がっているのだろう。

今年は、大会のコンディション(気温、天気、トレイルの状態)、自分の事前の練習、当日のレース運び、の3つの条件がうまくそろって、今の自分としてはもうこれ以上ない結果だったと思う。この歳にして、なんの競技においてもここまで出し切った感のあるレースをできたことには、神様にも、家族にも、そして自分自身にも感謝の気持ちしかない。

逆にいうともうこれ以上は、取り組みから変えないと望めないだろうし、今の自分にとっては来年以降に走る動機付けのハードルがとても上がってしまったように思う。

年齢を考えれば、良くて維持、普通なら少しづつ体力が低下していく現実の中で来年、どういった目標で走るかは、少ししっかりと考えてみる必要があるかもしれない。


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