加藤は想定通りのタイムで斜面上の誘導に現れた。後続が少なくとも30秒はいないことを確認してタッチを受ける。トンネルを抜け、階段状の斜面をよじ登って白い緩斜面のコンタリングに移る。柔らかい地面に脚が沈みスピード感はないが、走りのリズムは取れているし感触は悪くはない。POLARを見るとすでにHRは175、心拍の上がり方は悪くない。
直前の水曜日に走った30kmのペース走で思いのほかダメージが残っていた。木金土と養生はしたものの大腿部の回復具合に多少の心配がある。ウォームアップは必ずしも良い感触ではなかった。しかしいざレースに入ると体は動いてくれた。経験的にレース後数分で心拍がきちんと170以上に上がればまず問題ない。これならそこそこのペースで走りきれるだろう。ほっとひと安心。この時点で第一関門はクリヤ。
第二関門はテクニック。さすがにさびついてはいないか。確かに序盤はオリエンテーリングにキレはなかった。ラインの乗り換えがぎこちなく、藪や倒木地帯での方向維持が頼りない。ただそういう状態を許容する心構えはできていた。久しぶりのレースであることを考えれば、多少のもたつきはあってもミスしないことが重要。全体のペースは守れて走ることができたといえるだろう。
中盤のきつい尾根沢地帯はそれほどのロスなくこらえ、終盤のスピードレッグに移るとエンジンがようやく温まってきた。道をつなぐレッグでしり上がりに体が動くようになり、最後のロードレッグはかなり心拍も追い込んだ。ここで3連続ベストラップをとっているのは今のトレーニングを象徴している。練習は正直だ。
三走の村越さんにタッチ。レース展開を聞いて勝利を確信した。村越さんのレースはmade in Japanを象徴するかのように精度が高い。50分±2分は確実だろう。だとすれば他のチームに勝つチャンスはない。案の定50分ちかく経過した後、斜面上の誘導に金髪で独特の走りをする長身のランナーが姿を現した。さすがである。控え目に勝利を祝い、記念写真を撮った。
自身のパフォーマンスはNT選手のタイムが集中する47分前後に落ち着いた。いつもの定位置である。ただ学生のタイムが肉薄していたのは学生のレベル向上のせいか、NTレベルの停滞か。今年の学生は東北大、名大そして東大とかなり面白いらしいので、前者であることを期待しよう。もう2分くらい速く走りたい気持ちもあるが、今はそういうパフォーマンス向上にリソースを割いてないし、そう考えると上出来だったろう。
「あなたたち平均でまだ40はいってないでしょ」しのぶさんになんだかよくわからない自慢をされた。確かに平均すると38歳、まだまだアラフォーチームには及ばない。
2走のタッチ間際、ゾーンに立つと武田や安斉、多田が後ろに控えていた。15年程前のインカレから停止したままのようなシーン、思わず顔を合わせて笑ってしまったが、そう、あと10年たっても変わらない風景があるかもしれない。
これで当面オリエンテーリングのレースはおしまい。今度は裏方に回り、3月末の全日本の準備に注力する。インカレはもちろん、全日本ロングでも学生が活躍してくれることを期待しよう。
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