火曜日, 3月 01, 2011

東京マラソン-その2

「東京がひとつになる日」
どこかがこそばゆいような、フレーズ。

3万人が参加?応援する人は100万とも200万とも?確かにすごい人数だね。でも、東京の人口は1000万人以上だよ。「ひとつになる」は少し押しつけがましくない?
ずっと誇り高きマイナーを生き続けてきた自分にとって、誰もが認めるメジャーにはなんとなくヘソを曲げたくなる。だから東京マラソンというイベントの異様な盛り上がりはどこかしら距離をおいていた。

そんな自分も妻につられてここのところ応募だけはしてきた。昨年妻があたった。喜んで参加した妻は、感動しながら帰ってきた。あんな雨の中の悪コンディションだったのに。どちらかといえば辛口の方なのに、手放しで絶賛した。そんなに東京の真ん中を走るのは気持ちいいのかな?少し想像してみて、確かにそんなものかもしれない、と思うようになった。

今年は僕があたった。メジャーの神様がまあいいから一度出てみなさい、といってるようだった。
それなら一つ気合を入れて望んでみるか。ちょうど冬場のトレーニングのモチベーション持続に長い距離のレースを走ろうと思ってたのだ。すでに申し込んでいた2月の鎌倉アルプス42kmのトレランをキャンセルして、東京マラソンに冬場の目標を合わせることにした。

11月下旬から2月下旬までの3カ月、ここ数年では良く準備した方だろう。3カ月で1150kmくらい、12月から1月にかけての1カ月で500km走った。駒澤20周43km(あの川内さんと同じ練習!)が3回、15-25kmのペース走4回、30km以上のトレラン持久走も4回やった。体調を崩したり、思うように走れない時期も少しあったけど、今の生活では90点以上の準備だろう。この準備したことが大切、東京マラソンを走ることはおまけみたいなもの、と直前まで可愛くない態度を自分の中でとってた。

前々日の木曜日、受付をするために19時過ぎにあわてて会社を出、天王洲アイル経由で東京ビッグサイトに行った。受付を済ませたらさっさと帰ろうと思ってたら、マラソンEXPOが想像以上に立派で驚いた。ついつい、あちこちの展示を見ているうちに、なんだかだんだん緊張してきた。

さて、当日、結局僕は東京マラソンの魅力の下に跪くことになる。
「ああ、これが皆が狂乱する東京マラソンなんだ」と今さらながら納得した。

僕にとって象徴的な場面は2つあった。
1つは都庁前のスタート直前。青空にスカイスクレパー如く都庁が聳える。コーラス隊のアカペラで君が代斉唱。歌声ははるか高い空に抜けていく。その瞬間厳かな空気につつまれた。なぜか宗教的な静寂を僕は感じた。
直後の号砲と紙吹雪に入り乱れて走るランナー。その静寂から混沌へのコントラストがすごい。VIPが座る仮設のスタンドからの眺めはさぞかし壮大だろう、とちょこちょこ前の人につかえて走りながら思った。

もうひとつは銀座4丁目の交差点。レース中盤の21km付近、レース開始直後の混沌とは違い、自分のリズムを掴んで淡々と走るころ。そしてランナーもまばらになって閑散としたレーンと、大勢の観客に溢れる沿道のコントラストが強くなってくる。三越銀座店が見える交差点付近はそのコントラストが一番印象的だった。曲がった瞬間に思わず360度廻りを見渡して、ため息がでた。沿道の声援がすべて自分に向けられているような気がしてきて、「ああ、これが箱根のランナーが時々口にする至福の瞬間なのかな」と感じた。

35kmまでは多かれ少なかれ、そんな東京マラソン特有の雰囲気に包まれてる。ところが35kmを過ぎると突然レースの雰囲気ががらりと変わる。コースは起伏が出てきて観客は急に減る。周りも臨海地区特有の無機質な風景になる。ここからが踏ん張りどころ、普通のマラソン的なストイックな7kmとなる。

どんなに良いコースのマラソンでも、いつまでも続いてほしいとは思わない。35kmからは1kmがとても長く感じ、脚どりはどんどん重くなった。最後のコーナーを曲がるとテレビで見慣れた風景のゴールレーンにようやくたどりついた。

2時間48分14秒
35kmまではずっと3分50秒/km代でほぼ貫いたが、最後の7kmで4分~4分30秒近くまで失速した。でもそれはマラソンなら多かれ少なかれしょうがないか。その他32km付近でトイレ休憩を1分ほどとったロスはあった。でも品川で応援してくれた家族にもほぼ予告通りのタイムで通過できたし、そう思うとまずまず実力通りだったのだろう。
正直な気持ちは少し悔しい。きちんと準備すれば、30分台は厳しいけれど42,3分はいけると秋の時点では思ってた。だけど、事前準備も合格点、レース運びも合格点なら今の自分の実力はこんなものなのだと納得するしかない。

月曜日、出社するとまず上司に「どうだった?」と聞かれた。それが皮切りに、昼休み、コピーコーナー、打ち合わせの前後、電話の切り際、メール、数え切れないほどの会社の人に結果を聞かれた。そしてタイムをいえばお決まりのように「いやあすごい」とほめてくれる。ゴールシーンをネットで見てくれた人もいた。
今まで幾度となくレースに出てるけど‐自分にとってもっともっと誇り高きレースもあったけど‐、週明けにこれほど会社で反響のあったレースははじめてだった。
ああ、これが東京マラソンなんだ、と思った。メジャーの偉大さに敬服する。

もうひとつあとになって気づいたことがある。冒頭のキャッチフレーズがまんざらうそじゃない、そう感じさせるもうひとつの理由だ。ボランティアスタッフの笑顔である。これだけの多人数をさばいているのに、どこのスタッフも笑顔だった。出走している人に対して基本的に暖かい。大規模イベントにありがちな人をコントロールする対象とみなすような冷たさ、そういうのは一切感じなかった。正直見事な運営と思う。

もう一度出たいか?と聞かれたら、直観的には間違いなく「イエス」である。
出たことない人には一度出てみることをお勧めする。

でも、この感覚、ファーストインプレッションのなせる新鮮さにも感じる。はたしてもう一度走ったら、銀座4丁目であの不思議な体験をできるだろうか?

初めてだからこそ感じる一度きりの初心な体験なのではないか、とも感じる次第である。





2 件のコメント:

miyakawa さんのコメント...

お疲れさまでした。やっぱよかったでしょ。3年前の記録で21分負けました。3回走りましたが、もう、別のところでもいいという感じ。それで、湘南にしました。

KK さんのコメント...

よかったですね。参加費の1万円は安いと思うし、10万円のチャリティで走る選手の気持ちも少しわかります。
タイムとしては少し不満なので来年もう少し上を目指してどこかで1本走りたいと思います。湘南はよいのでしょうか?

信越100mile 2022

<レースの記録を忘れていたので後から記載>  START 18:30  日没して約30分、暗闇の中スタート。序盤はスキー場の中の登りとトラバースを繰り返す。 2,30分で下りからロードに出てそこからは比較的平坦のパートが続く。1時間30分くらいで斑尾山に向けて急登が始まる。...