家族の予定を実家の母と調整してた時、10月11日の週がだめな理由を聞かれた。
あまり細かく説明してもしょうがないと思いつつも、
奥多摩の山々を70km走るレースに出るのだと説明した。
うちの実家で自分は異色の存在。母は何十年来音楽教師、父も定年後の趣味で歌っている。ついでに兄も音楽が趣味、妹は部屋にばかでかいベースをおいている。何故か次男坊の自分だけまったく違う方向に走っていった。
そんな山ともスポーツとも無縁の母にとって、10km以上はえらくしんどい距離でひとくくりである。70kmといってもぴんとこないらしい。たまたまテレビ番組に出てきた奇人を見るようにあきれてる。
「へえ~、あんたも好きねえ。何人くらいでるの?」
「それがさあ、2500人。しかも申込みの翌日に定員オーバだって」
母はこちらの方に真剣に驚いて目を丸くした。
その、多少バブル状態のような気がしなくもないトレイルランブームの中第16回ハセツネは開催。
そもそもこのレースに出たきっかけは何だろう?レースの存在は第1回から知っていたが、オリエンテーリングに勤しんでいた当時、寄り付いてはいけないキワモノのイメージが強かった。富士登山競走までは許容範囲。それ以上は踏み越えてはいけない域。長らく田中正人さんや琢さんの活躍を、距離をおいて静観していた。
そのレースに出るきっかけをつくったのは妻である。
5年前まだ付き合って間もない頃。突然参加してみたいといった。
「まさか、うそでしょ?」まずハセツネを知っていること自体驚き、はじめは冗談かと思った。
たしかに山屋だけど、走ることはまったく素人でマラソンも完走したことない。
でも真剣そのもの。そのうち装備の準備をはじめた。確かにアルプスの稜線を幕営で歩くことを思えば、24時間の制限時間があればチャレンジできなくもない。
結局説得されて参加することに。調度、僕自身スイスの世界選手権後で、体が壊れてもいい時期、少々オリエンテーリングに閉塞感を感じていた頃でもあった。
その年に二人とも完走。ビギナーズラックもあった。味をしめた。病み付きになった。それから5年。結婚、出産、出産。いろいろあったけど、夫婦で出来る限りエントリーしている。
今年は残念ながら妻は産後のため出走を断念。2年前産後5ヶ月で出走しえらい目にあったので懲りたらしい。第2CPで棄権し、バスで降りてきた後つぶやいたのは「乳が張って痛くて走れない」だった。「じゃあ次は月夜野で赤ん坊抱えて待ってようか?」神様に叱られそうな夫婦である。
妻と子供を置いて今回のレース。9時間54分なり。中盤以降、消化器系と循環器系のトラブルがあり2,30分はロスしたかもしれない。じつはそのロスは今自分的に重い課題なのだが、少々マニアックな話なので他の機会にゆずる。いずれにしろ自分の持久系レースでの実力は今こんなものである。もちろん上位の選手の走りを見ると、もっと準備をして、自分も限界まで走りたいという欲求にかられるが・・・。
自分はなんでこのレースに出つづけるんだろう?
毎年きちんと調整できているわけではない。実際成績も周りのオリエンテーリング選手と比較すればパフォーマンスは低い。
そもそも、自分の一年のトレーニング周期は時期的にハセツネと波があってない。
だけどなぜか申し込んでしまう。
ただのロマン、それはもちろん大きな魅力である。だけど多分それだけじゃない。
考えてみるとそれは刺激である。
全日本チャンピオンとしてオリエンテーリングの世界では一応の成功を見ている。しかしそれはあえていうなら、日本という低山に登っただけ。欧州を中心とした世界の高峰は依然として立ちはだかっている。しかしその欧州は遠い。生の刺激は年に1度味わうのが精一杯。
トレイルランは日本にいて自分を遥かに超えるレベルに接することのできる世界である。トレーニングから競技へのコミットメントまで、色々な意味で選手のレベルは今の日本のオリエンテーリグより数段上である。そういうレベルを肌で感じることが、井の中の蛙にならないための、大切な刺激なのだ。
もし本場欧州のオリエンテーリングが距離的にも金銭的にも近いものであれば、自分はトレイルランを走らなかっただろう。そう考えると、ハセツネ他のトレイルランは一種の「疑似体験」かもしれない。
今年、とうとう7時間30分台にまでトップのタイムが伸びた。どこかの記事で、鏑木さんが「才能とか素質ではなく、努力とか思いが通用する数少ないジャンル」といっていた(正確ではないかもしれないが)記憶がある。しかし僕から見れば、ハセツネも才能とか素質の世界に入りつつあるように思う。そして、その世界で今だ進化する鏑木さん、横山さんを見ていると、本当に競技者として敬服する。そう、相馬さんも今回は残念だったけど、きっと今後巻き返してくれるに違いない。
オリエンティアの面々も記録を大幅に伸ばした。どちらかといえば控えめで、熱い思いを秘めるタイプがなぜか多い。(・・・そしてアウトドア選手なのに何故か色白が多い・・・)
そうした選手が努力して着実に進歩するのを見ると、準備と結果の関係が見て取れて気持ちいい。僕はその気はまったくないけれど、レース後の皆の顔を見が、男前でとても眩しく見えた。
急激に進む高速化の中で順位は厳しくなるけど、是非今後も頑張って欲しい。
最後に、今年のレースで一番?嬉しかったのは、月夜見の応援!(という意見他にも多し!)
一番気分的にもキツイ時間、予想外だっただけに嬉しかった。最近考えてみれば黄色い声なんて家に帰った時の娘くらい。久々に元気が出ました。どうもありがとうございました、応援してくれた皆様に本当に感謝。
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