土曜日, 6月 26, 2010

村上春樹の走る本

話題の本をいち早く読むほうではないと思う。だいたい書評なんかで話題になった後に本屋で手にとっても、その場では買わないことが多い。ぱらぱらとみて一度書棚においてしまう。次の機会にもう一度本屋で見かけて、それでも「ほらかってごらんよ、面白いよ」と誘ってくる本は観念してかってしまうのだ。

そんなパターンで最近買ったのが、村上春樹の「走ることについて語るときに僕の語ること
大分前に書評で話題になったので、単行本が出たのはおそらく2,3年前だろう。村上春樹の文章は好きなので興味は惹いたけど、まる1冊走ることばかりではさすがの村上春樹でも間延びした中身なんじゃないかと、勝手に想像して直に買えなかったのである。
実際、走らない人には一冊読むのは少し退屈かもしれないけれど、走る人にはお勧めだと思う。
だいたい、走るとは聞いていたけど、フルマラソンを毎年走るとか、多い月は300km以上走るとか、サロマ湖を11時間台で完走した経験があるとか、そんな筋金入りのエリート市民ランナーだとは知らなかった。
そしてもちろんランナーとして同感するポイントがあちこちにちりばめられてる。世界屈指の文豪がランニング中やそれにまつわる心象風景を表現すると、こんな風になるんだ、と素直に関心してしまう。とくに走り続ける理由について書いているけれど、控え目だけど芯のある走る哲学みたいな部分は、自分の走り続ける理由を代弁してくれたようで何ともすっきりした気分になった。
そして一番興味深いのはサロマ湖100kmの完走記だろう。僕はロードの100kmは走ったことはないけれど、同じようなエンデュアランスのトレイルランニングを走った時の経験がそのまま書いてある。
さすがの村上春樹の文章をしても、走った経験のない人に僕らがこうした非常識なレースを走る本当の理由を分かってもらうことはできないかもしれない。でも、走った経験のある人やそれに近い経験をした人には、きっと僕らがこうした途方もないレースに求める「何か」を共有できるのではないか。

特に最近走ることへの動機付けがうまく見つけられないまま無為に過ごす日々が続いていたため、とりわけ村上氏の文章が新鮮に見えたのかもしれない。

この本には、村上氏が小説家になった成り行きやその後の生活などにも触れているが、その部分は興味深くはあるけれど、僕にとってはこの本のおまけみたいなものである。きっとこの部分にすごくメッセージを感じる人もいるんだろうけど。

ということで、一度手にとって読んでみてほしい。


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