もちろん質問前後の文脈などを無視して捉えてしまうと誤解を招きやすいので注意は必要だろう。ある限定された状況(ここでは朝錬について)での話しである。
それでも、彼は大学院で運動生理学を学んだスペシャリストでもあり、自身も強くなるために色々なトレーニングを貪欲に学ぼうとする努力家でもある。その彼がそういうのはちょっとした驚きだった。そして心で叫んでしまった。
「あっ俺も!」
長年心の隅に引っかかってた疑念が少し晴れたような気がした。
白状すると、ストレッチはあまりしない方である。ところがスポーツの世界では、運動前後にストレッチをするのは基本中の基本。きちっとストレッチをしないというのは、日常生活で歯を磨かないのと同じようになんだかとてもずぼらな印象を与えてしまう。だからストレッチは、実はあまりやってなくても、一応「やった方がいい」と答えてしまうのが心情だ。
僕の場合、ジョギングからキロ4分きるくらいのランなら、ゆっくり目に走り出してスピードを上げていき、終わりも数分のクールダウンをするだけで十分である。ストレッチはしない。シャワー浴びた後の夕飯時や寝る前に、ちょっと四肢を伸ばしたりする程度だ。
スピードトレーニングやオリエンテーリングになると、さすがに多少やる、それでも、体が暖まってから体の張りを確かめるために気分で数分やるだけ。それ程時間はかけない。レース後もメインはクールダウンのジョグでストレッチはおまけである。どちらかというとおまじないみたいなものだ。そのかわりウォームアップ&クールダウンの時間はかなりこだわって確保する。ウォームアップは一次アップと二次アップで計30分/5-6kmは走る。スタートまでとぼとぼ歩いている選手を見ると、よくそれでレースできるなあと不思議に思う。
ストレッチ嫌い、なのかもしれない。そんな面倒臭がりやなのだが、一応自分なりに正当化している。勝手な理由は3つ。
1) そもそも人類は何十万年前からアフリカの大地を走っていた。獲物を捕らえたり、あるいは猛獣から逃れるのにストレッチをしている余裕があるはずない。のんびりたたずんでいても次の瞬間は全速力で走ることができる身体を元来備えているはずだ。
2) ヨーロッパの選手とトレーニングを共にすると、かならず前後の準備に一番時間がかかるのは日本人である。もたもたしていることもあるが、彼らは驚くほど簡単な準備運動で森にさっと消え、走り終わるとさっさと着替えて車に乗り走り出す。地面に寝そべっってゆっくりストレッチをしている選手はほとんどいない。
3) 時間がもったいない。時間があればストレッチをやるに越したことはない。ゆっくりしてトレーニングの士気を高めるのがいい。でも平日になんとか1時間のトレーニンググ時間が確保できたとして、1時間のランをすれば13,4kmは走れる。でも10分ストレッチ+40分ジョグ+10分ストレッチだったらせいぜい8,9kmだ。それほどスピードを出さないのならランの中でウォームアップとクールダウンで有酸素運動の時間を長くとった方がよいと思ってる。
僕だってスポーツクラブに行ってゆっくり時間をかけてストレッチをすることもある。でもそれはマッサージなんかをするのと同じでリラックスのためだ。もちろん、誰もが同じではない。怪我しがちな人はそうはいかないかもしれない。僕がきちんとストレッチをしていたら大助並みのスピードを得ていたかもしれない。あるいは今の自分のトレーニング量ではあまり必要ないのかもしれない。月50、60時間トレーニングすれば、それに伴い身体の手入れの時間も必要になるだろう。
20年以上競技やってても、なにが正解かは分からない。でも思うのは、いつになってもいろいろな人のやり方、情報を集めることは重要だということ。
一つのオピニオンとしてとらえて、安易にまねしないで下さいね。
2 件のコメント:
高橋です。
鹿島田さんのブログいつも楽しく拝見させていただいています。
ストレッチの重要性ですが、先日行われた「ランニング講習会」で谷川さんにヨーロッパの選手はあまりストレッチをしない。といった趣旨のことを話したら鼻で笑われてしまいました。
競技によっても異なるのかもしれませんが、谷川さんいわく「ストレッチの目的は怪我予防などもあるけれども、その日の筋肉の状態体調などを確認する作業でもある」とのことです。
余談ですが、ヨーロッパの選手も軽い技術トレーニングではなく、高強度レース形式の練習をするような場合はアップやストレッチをしますよね。
善徳ありがとう。
谷川さんのコメントは僕も小泉君のページで見ました。
もちろん、僕自身スポーツの知識に勉強熱心というほどではないし、本当にぎりぎりのところで競技をしているわけではないので、決して一般論にはならないと思ってます。もちろんこれからの選手にはまずはきちんと教科書通りに体の手入れをして欲しいですね。
少し説明が足りなかったのですが、僕自身も、準備運動とクールダウンの重要性は疑うまでもないのですが、その中に占める静的ストレッチの割合が少ないということだと思います。レース前には可動域を広げるような運動はかならずします。
筋肉の状態体調などの把握という点は、僕は残念ながらストレッチでは体と対話できない。むしろウォームアップのジョグやウインドスプリントで対話する感じです。そのあたりは競技の質の差もあるかもしれませんね。
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