土曜日, 11月 25, 2006

水道技術国際シンポジウム


11月22日から24日に開催された「水道技術国際シンポジウム」に仕事で参加しました。

「パシフィコ横浜」で開催、国際といっても参加者のほとんどは日本人ですが、冒頭には横浜市の中田市長も挨拶し、横浜市としては比較的力を入れて準備していたようです。

「水道技術」って何? 新しいタイプの蛇口とかを開発するの? と普通の人にはイメージできないかもしれません。

少し説明すると、「水道技術」は水道施設全般に関わる技術です。僕の専門分野でもあります。

水は蛇口をひねると日本中どこでも飲める水が出てきます。日本に住んでいると当たり前のことですが、実はそこには2つの驚きがあります。

一つは「水が出る」という不思議。蛇口から出る水はもともとは、何キロ、時には何十キロも離れた川や湖、地下水などから取水した水です。日本の水道の普及率は97%。広い街のどこで蛇口をひねっても、ちゃんと圧力を持ってきれいな水が出るよう、取水してから浄水場へ、また浄水場から各家庭へと水を送る配管がしかれているです。この配水システムは時には100年以上前に作られた配管を使っている場合もあり、近代水道が長い歴史の中で築き上げたネットワークの上に成り立っています。

一方、「きれいな水」という不思議。川や湖の水は決してきれいではありません。下水の放流水がまじっていることもあります。にごりや色、時には不快な臭い、また細菌やウイルス類もたくさん含まれ、その水をそのまま飲むのは安全ではありません。今でも水道の不備で後進国では伝染病の蔓延が深刻な問題となっています。
水をきれいにするのは浄水場。凝集沈殿や、ろ過、消毒といったプロセスを組み合わせて安全な水をつくります。

水道技術はこの2つの驚きを実現します。前者を「管路技術」後者を「浄水技術」と呼びます。私は後者を専門としています。

「水道はきれいな水が豊富に出て当たり前」という現代です。近代水道の夜明けは19世紀末ですので、ある意味成熟した技術分野です。なので現代、スポットライトの当たることはなく、どちらかと言えば地味な技術分野です。そうした技術の位置づけを反映してか、こうしたシンポジウムに参加される技術者も比較的「地味」だけど「まじめ」そうな方が多い。

ただ、「じゃあもう水道技術なんて成熟しているし、そんな技術分野はいらないのでは?」と考える方もいるかもしれない。でもそう簡単ではないんですね。

色々な健康影響が懸念される汚染物質の発見や、消費者のおいしい水への要求、そして人口減少時代を迎えるこれからに持続可能なシステムを考えて行くことなど。
今多くの水道関係者が歯がゆく思っているのは、ペットボトル水の消費量の急激な拡大と、家庭用浄水器の普及です。どちらも水道への信頼が落ちていることを示している、と水道関係者は危惧しています。「健康や味への要求が高まっただけでは?」と普通の人は思うかもしれませんが、水道関係者は、浄水器なみの水(すでにそのレベルに達している場所もたくさんありますが)を供給し、一般の人の信頼を取り戻すことにとても熱心です。



確かにどんどん水道の普及率が上がっていた60年代に比べれば、今後の課題、そのテーマは地味です。が、それでも成熟した技術、システムを維持していくにはそれなりの切磋琢磨が必要なんですね。


話はそれますが、もう一つ水道ととりまく今、大きな話題。
ここでクイズです。皆さんが毎月(あるいは各月)に支払う公共料金を思い出してください。
電気、ガス、電話、水道
この中で水道だけ仲間はずれです。理由は?

そう、例えば東京を例に挙げると、電気は東京電力、ガスは東京ガス、電話はNTT東日本から請求が来ますね。
いずれも民間企業です。就職先としては人気の超優良企業です。
ところが水道は東京都水道局から請求が着ます。東京都水道局は?地方自治体である東京の一部局です。
その他鉄道や空港など、多くのインフラに関わる企業が民営化されている中、水道は唯一地方自治体が直接経営するインフラなのです。
なぜ? その理由は様々ですが、人間の生命に関わる「水」の供給を、営利目的の民間企業にやらせるわけにはいかない、というのが主な理由だと思います。
ただ、海外ではすでに多くの国で水道の民営化が進み、日本でも法律的には民間の企業が運営することが可能です。
今後、経営ノウハウと資金に潤沢な民間企業に水道の経営が移って行くといわれています。
10年後くらいには、水道料金の徴収も、「東京都水道局」ではなく「東京水道株式会社」なんてところからくるようになるかもしれません。

話は横浜に戻って・・・。

シンポジウム自体はかなり専門的。
でも併設された展示会には、80の企業や水道事業体等が出展してました。普段水道の展示会は業界の人しか来ない、ちょっと異様な雰囲気のところもあるのですが、今回は横浜市の方で事前に市民に積極的にアピールした成果か、一般の方が多数来場していました。僕も展示していた水処理装置のモデルを子供連れのお母さんに説明したら、「こうして水はきれいになるんだ」と思いの他感心してもらえて、それなりに有意義な一日だったかな、と感じます。


第46週 Run66km 5時間50分




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